藤井祐希・担当回

まずは片山さゆ里さんというアーティストのライブ映像を観ることに。  

観終わって小休止。俳優は、じっとしたあとは一般人以上に身体をほぐしたがりますね。

なぜ彼女はこのアーティストを紹介したのでしょうか?

まずパフォーマンスとして好き、一人で全部やっていることに惹かれるとのこと。演劇は集団制作が多いが、やる作業として実際はかなり個人作業の部分が多い。これと個人創作と何が違うのか、最近やりたいことは一人で創作すること。そんなことから、藤井さんはこのアーティストの動画を観て「クヤシイ!」と感じたそうです。

そもそも、〈演劇〉について悩んでいる。「なぜ演劇をやっているのか?」といった問いだてに、大義名分のある答えを自分は持てていない。そんな自分は続けていっていいのだろうか?

という問題意識から、彼女が用意してきたのは、「自ら用意した問いかけをメンバーに一対一で質問してもらう」というもの。

つまり、藤井さんの方で用意してきた質問をメンバーが藤井さんに投げかける、というまさかの〈問いの千本ノック〉。しかも質問役をとなるメンバーも即座にその問いに答えなければならないルール。さらに質問一覧をみるなりメンバーが絶句するほどのど直球な問いの数々。さあ、これは大変です!

そこから始まる質問の投げ掛け合いと応答。

「個々人から発せられる〈演劇〉にまつわる問いと答えは横から聞いているだけでも、イメージの多様さに揺さぶられる。 多角的に今の自分を見つめ直す時間になりました。」(牧くん談)

藤井さんの答えだけをいくつか書き出すと、「人を喜ばすことをしたい、これは演劇じゃなくてもできる」「誰かの希望になりたい、ちょっとした希望でいい」「演劇をやっていない自分を想像できる」「演劇をやっていく責任を最近自分は怖がっている」「私にとっての演劇をわかりたい」などなど。

藤井さんに問いを投げかける時間。しかしながら、問うということは、問われるということ。 演劇をする意味。演劇をする理由。演劇で成し遂げたいこと。 俳優としての、あなたにとって「演劇」とはなんなのか、を問う。 一人一人、誠実に言葉を選び紡ぐ時間に。

話題が多岐に渡ったのであくまで大掴みな要約にすぎませんが、藤井さんといまの〈演劇〉の関係は、「できないことへの挑戦と生きやすさの追求」という二点に重心があると、ひとまず言ってみることにします。それはパフォーマンスというカタチを持つ前の、出口を探し続けている衝動のようにも受け取れるもので、その意味でも片山さんというアーティストにクヤシサを感じるのは納得のいくものでした。藤井さんがこのプログラムのあいだにどんな変わり方をするのか、そして我々は12月3日に何を目撃することになるのか。

以下は、小濱さんによる雑感。

「参加者の一人一人が、「演劇をする意味」「演劇をする理由」「演劇で成し遂げたいこと」「俳優としての、あなたにとって〈演劇〉とはなんなのか」と言った問いを、藤井さんに問う。

問うということは、問われるということ。 問いが、翻って問いかけたものに帰ってくる。禅問答のような磁場が生まれた。

一人一人、誠実に言葉を選び紡いで行く。ただ、藤井さんは、その誠実な言葉の裏側に、言葉に仕切って/区切って、区切りきれなかったものを、すぐに切り捨てず、「果たしてこれを捨てて良いものだろうか」と見つめ続ける。

「簡単に割り切るな、わかった気になるな」と、覚悟を突きつけられる。」


【藤井 祐希 Yuki Fujii】

1993年生まれ。群馬県出身。2014年に上京し、座・高円寺が開設している演劇学校、劇場創造アカデミーで2年間演劇を学ぶ。修了後2年間はフリーの俳優として精力的に舞台に出演。活動に迷いがでてきたため、現在は舞台に立つことを休止して、自分がやりたい表現とはなにかを模索している。